[効果:ローターの加熱を抑制し、パッド面をスムースに保つことで、耐久性、制動力の向上が見られる。使用するパッドの選択肢が要。]
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BAER社の"Eradispeed"と呼ばれる軽量ハイパフォーマンスタイプのクロスドリル&スロットローターと、HAWK社の"Autocross"パッドを装着しました。 "Eradispeed"はクロスドリル&スロット加工された精密ローターに、フロントは軽量化のため中央部分を一体成型せずに、アルミ製のパーツを組み合わせたツーピース構造のローター。 リアはパーキングブレーキ用ドラムが必要なためツーピースではありませんが、同じく軽量化が図られています。 重量的には、純正ローターに比べ、フロントは1輪当たり約3.6kgの軽量化となります。 見た目だけは同じような安価な類似品がありますが、それは全くの別物です。 Install BAER's Eradispeed Rotor. |
"Autocross"は"Street"タイプの上位に位置するもので、カーボンメタリック製。より高耐熱性になっています。 鳴き防止のシムと磨耗警告金具が着いた、純正品との互換性が高いものです。 Install HAWK's Autocross Brake pads. |
フロント/FRONT |
リア/REAR |
ホィールは2001年モデル用に換装したものです。
キャリパーが赤いのはZ06用ではなく、自前で塗装したものです。 センターキャップのロゴは塗装したものです。 Wheel was changed to 2001 model. |
本品は99年モデルに装着したものですので、97〜98年及び2000年以降モデルと詳細で違う場合があります。 ブレーキ関連部分は安全保安基準対象部分なので、専門知識が無い人、工具類がそろっていない場合には絶対に行わないで下さい。 |
ジャッキアップしてタイヤを外したら、ホィールナットをローター固定用に3個程締めます。
ボルトのキャリパー内側に16mmスパナを入れ(○型だが2個所にヘコミがあってそこにスパナが噛む)、ボルトの頭を15mmソケットレンチで緩め、ボルトを取ります。 上側のボルトだけを外すこと(下側はまだ緩める必要はありません)。 Remove only upper bolt(15mm/Bolt and 16mm/inside). |
この段階で下側のボルトを支点にしてキャリパーを回転させると、ローターから離れるので、パッド上下を支える薄い銅製の金具と共にパッドを外します。
Rotate Caliper and remove Pads. |
次に下側のボルトも上側と同じ要領で外し、キャリパーを外します。 この際、ブレーキホースにダメージを与えないように注意。特にステンメッシュホースを使用している場合は鋭角に曲がらないように留意です。 外れたキャリパーはヒモ等で縛り吊るし、Aアーム上に置いて下に落ちないように固定しておくと良いですね。作業中の思わぬ衝撃で落下すると、ブレーキホースにダメージを与えてしまいます。 Remove down side bolt and remove Caliper .Be careful about damage to Brake Hose. |
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次にキャリパーのベースを固定しているボルト(21mm)を外してキャリパー固定フレームを外します。 このボルトは175Nmのトルクで締め付けられている上、緩みによる脱落防止の為に中にボルトロック剤が塗っているので、緩める際には、まずCRC等を塗り、さらにハンマー等でたたかなければ緩みません。 ボルトヘッドをなめて駄目にしないようにする為にもメガネレンチの使用は絶対条件です。 又、ハンマーでたたく際には、メガネレンチが外れて飛んでいかないようにしっかりと押さえておくこと。安物のレンチを使うとボルト山をなめてしまったり、衝撃でレンチ自体が折れてしまったりする場合があります。 Remove Caliper base bolts. They are tighten 175Nm. |
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フレームが外れたら、ローター固定用に使ったホィールナットを外し、ディスクローターを手前に取出して外します(重い!! 足の上に落とさないように注意)。また ローター脱着の際にはホィールボルト山を傷付け無いように注意。 ローター裏側の軸受けハブに錆やゴミがある場合は、ついでに清掃とグリスアップをすると良いですね。 また、ホィールボルトにはANTI-SEIZE PASTEを塗ると良いです。 リアの作業工程も、ボルト径を含めて全く同じです。但し、リアのローターを外す際には、必ずパーキングブレーキを解除しておきます。 ついでですから、リアのパーキングブレーキシューをブレーキクリーナーで清掃しておくと良いですね。 Remove Rotor. |
A装着 Installation
基本は取り外したときと逆の手順です。ローターは前後共に回転方向が決まっており、「L」と表示されているほうが運転席側となります。 新しいローターを装着し、再度ホィールナットでローターを固定してから、キャリパー固定フレームを取り付けます。 取付けボルトにANTI-SEIZE PASTEを塗布してから175Nmのトルクで締めます。 万一このボルトにダメージを与えてしまったら、新しいものに交換すること(勿論純正品又は専用品を使用します。これは高強度ボルトです)。同じ径であっても市販されている普通のボルトは強度的に使用できません。 Paint Anti-seize on bolts. |
キャリパーを取り付け、まず下側のキャリパーボルトを31Nmで締めます。
Install Caliper and tighten under bolt to 31Nm. |
次に新しいパッドを組み込みます。組み込みの際には、パッドのローター接触面に油分等が付着しないように注意します。
パッドは磨耗警報用爪が着いているほうが内側になります。
パッドを支える銅製の金具(4)とキャリパー及びパッドの隙間と、パッドとキャリパーの接触面にはブレーキキャリパー専用グリス(耐熱性)を周囲にはみ出ない範囲で薄く塗布します。 パッドの組み込みができたら、キャリパーを定位置に戻して上側のボルトを31Nmで締めます。 パッドの厚みでローターにキャリパーがスムースに入って行かない場合には、ブレーキピストンを手でゆっくり押しもどします。いっぺんに強く押し込まないこと。ブレーキオイルの逆流でリザーバータンクからオイルが漏れ出てしまう場合があるので注意。 フロントは2ピストンなので、2つを同時に押し込みます。又、キャリパーボルトを指定トルク以上で締めつけるとキャリパーの反復動作ができなくなるので注意。 Install Pads and install upper caliper bolt. |
ここでエンジンを始動して、パッド装着時にピストンを押し戻して逆流したブレーキオイルを戻すためにブレーキペダルをゆっくり奥まで数回踏み込みます。
以上の作業が終ったら、ローター固定用に使っていたホィールナットを外します。
最後にブレーキクリーナーでローターとパッド、キャリパーに付着した油等を完全に除去すること。又、ブレーキホース表面や取付根元に損傷やブレーキフルード漏れ等が無いことを確認すること。
Before Next work, start Engine and foot brake pedal to the end a few times to return brake fluid.
ホィールを取り付けます。ホィールナットの締付トルクは140Nm。最初は手で締められるだけ締めてから、レンチを使います。
均等に締め付ける為に、対角線上を星印を描くように順番に行います。一個所を一度に規定トルクまで締め付けないこと。
マグネシウムホィールと2000年以降モデルのプラスチック製ナットカバーは、手で強く締め付ける程度でOKです。レンチで力をかけてしまうとネジ山を駄目にしてしまい、最悪の場合脱落して紛失します。
アルミホィールのセンターキャップは、位置を合せて上からカチッとロックするまで押し込むだけです。
本作業を順番に4輪共に行います。 前輪又は後輪だけ、又は片側だけを行った段階での走行は絶対に止めて下さい。
Clean up all parts by Brake Cleaner and install wheels. Wheel nuts tighten
to 140Nm.
装着が完了したら試験走行を行います。通常の走行を開始前に低スピードの内にブレーキを踏み、正しく動作していること、異音等が無いことを確認し、走行を開始します。走行開始直後は、停止の瞬間にブレーキパッドが擦れて大きな振動音が出ることがありますが、これは異常ではありません。
なるべく軽いブレーキングを長い時間行う方法である程度走り、ブレーキローターを過熱させた後で、各取付ボルト類が規定トルクで締まっていることを確認します。
ローターもパッドも新品の場合、最初のうちは効きが甘いので、走行にあたっては十分注意すること。
パッドやローターが新しい場合、装着後最初の500km程度はあたりがつくまでハードブレーキングは避けなければなりません。
特に高性能パッドにありがちな「鳴き」も、最初のあたりがつかないうちのハードブレーキングが原因になる場合が少なくありません。
また、100km程度走行後には、各ボルト類が規定トルクで締まっていることを再度確認します。
軽量ローターの装着によるバネ下荷重低減効果は、2001年モデル用ホィールへの換装を行った時と同じく、はっきり体感することができるものでした。軽量化の効果は、発進の瞬間における機敏性や中間加速性能で特に発揮されます。
ローターとパッドの絶対性能は未だ慣らし中で、ハードブレーキングが許容されない状況下であっても、大変優れたものであることが判ります。 |
今後、慣らし完了後に、連続したハードブレーキングや高速域からの急減速に対して、どこまでの性能が得られるかが課題となります。
基本的には、スポーツブレーキパッドを装着していたポルシェ928S4は勿論のこと、C4時代にBrembo装着の体験もあるので、それにどこまで迫れるかというのが論点になります。ローターもパッドも耐熱性、放熱性共に大変優れた性能を持っているようなので、かなり期待できそうです。
現在のところ鳴きはほとんど出ていません。慣らしが進むにつれて制動力が向上して行くと思われます。
ただ、美しいローターの表面が、カーボンで黒くなってしまうのが残念ですね。
ホィールクリーナーでブレーキダストが紫色に変色するものがありますが、それを使うとローターに変色した部分が固着して、取れなくなってしまう場合があるので、使用は避けたほうが良いでしょう。基本は、アルミ専用ではなく、鉄ホィールへの流用もできる製品を薦めます。
装着後の走行がおよそ200kmとなりましたが、慣らしが進むにつれてカーボンがローターに付着して黒くなる度合いが軽減してきました。
効きも強力になってきており、特に高速域からの急制動時は素晴らしいですね。 但し、効きの良さを堪能してローターもパッドも過熱した直後の通常ブレーキング時は、停止直前に僅かながら鳴きを味わうことになりますが...。 鳴きの絶対程度については、ブレーキクワイアットの塗布により解消するものではなく、ローターとパッドが擦れる音のみであるため、然程大きなものにはなっていません。パッド裏のシムは効果があるようですね。 |
ただ個人的な意見ですが、HAWK社のAutocrossパッドよりも、RM Racing社のパッドのほうが初期制動が好ましいと感じています。
初期制動時の減速が強いということは、それがそのまま継続されれば、ブレーキパッドとしては最も優れたものであることになります。
そしてRM Racing社製品は、まさにそれに相当する逸品であると思います。
制動距離を計測すれば、どちらも同じ距離になるのかもしれませんが、加速と制動は表裏一体の走行における非常に重要な要素であるので、制動が自分の思う通りに行われるほうが、結果としてより早く走れることになると考えています。