<チューンドヘッドブロック&カムシャフト装着シミュレーション>

ポート研磨を始め、高精度な加工により製造されたヘッドブロックと、それにマッチしたカムシャフトの装着を行うに際して、その作業工程シミュレーションを行いました。
インテークマニフォールドやヘッダースの装着時に行った作業に、さらに新たな作業が加わるため、装着にはかなりの時間が必要です。
またカムシャフト脱着スペース確保のため、ラジエターアッセンブリーを全て外すか、エンジンを降ろす必要もあります。

作業を開始する前に、新しいシリンダーヘッドブロック用ガスケット左右2枚、エンジンフロントカバー用ガスケット、専用固定用M11ボルト20本、カムシャフト脱着用M8、1.25mmネジ山、長さ100mmボルト3本を用意する。
また、専用工具として、J41665、J41476、J41480が必要。


1.純正ヘッドブロックの取り外し

@クーラント液を抜く。クーラントはエンジンブロック内に残留している分だけが抜ければ良いので、サーモスタットを取って排出させれば良い。→ローテンプサーモスタット装着を参照

Aラジエター及び電動ファンアッセンブリーを外すか、エンジンを降ろす。

Bバルブロッカーアームカバーを外す。→Z06用インテークマニフォールド装着を参照

Cエギゾーストマニフォールドを外す。→B&Bヘッダース装着を参照

Dインテークマニフォールドを外す。→Z06用インテークマニフォールド装着を参照

Eバイパーベッドホースを外す。→Z06用インテークマニフォールド装着を参照

シリンダーヘッドを固定しているM11とM8ボルトを外し、ヘッドを外す。
尚、M11ボルトは再使用できないので、予め新しいものを用意しておく。
ガスケットを外す。ガスケットは新しいものを使用するので予め用意しておく。
続けてカムシャフトを外すので、その作業の間に異物が燃焼室に混入しないように、しっかりとカバーをかけてテーピングにより密閉しておくこと。

2.純正カムシャフトの取り外し

ドライブベルトを外し、フライホィールギアを固定する工具を装着してからカムシャフトドライブ用のアンダープーリーを外す。
エンジンフロントカバーを外す。ガスケットは再使用しない。
カムシャフトドライブ用のギアプレート固定ボルトを外す。
カムシャフトポジションセンサーを取り外す。
カムシャフトリテナーボルトを外してリテナーを外す。
M8、ネジ山高1.25mm、長さ100mmのボルトを3本カムシャフトにねじ込み、それを使って静かにゆっくり回転させながらカムシャフトを引き出す。

3.チューンドカムシャフトの装着

新しいカムシャフトに外す際に使用したボルトをねじ込み、挿入する。
カムシャフトリテナーを装着する。ボルトの締め付けトルクは、25Nm。
カムシャフトポジションセンサーを取りつける。ボルトの締め付けトルクは25Nm。
カムシャフトポジションセンサー用のOリングに破損が無いことを確認する。ダメージがあれば新しいものと交換する。
クランクシャフトに、J41665専用工具を装着し、ギアのマーカーが真上に来るように回転させる。
カムシャフトドライブギアをカムシャフトに仮固定し、ギアのマーカーがドライブギアのマーカーと一致する真下に来るようにカムシャフトを回転させる。
位置が確定したら、カムシャフトドライブギアを取りつける。ボルトの締め付けトルクは35Nm。
エンジンフロントカバーを装着するにあたっては、特殊工具が必要。これによりオイルパンとフロントカバー及びカムシャフトシールの位置関係を正確に保ち、密着性を確保することができる。
フロントカバーとオイルパン及びエンジンブロックの位置関係の誤差は、0.5mm以下にしなければならない。
J41476は装着して手でボルト締めを行う。次にJ41480は25Nmで締め付ける。
オイルパンとエンジンブロックとの段差は、0.5mm以下にする。規定値になっていない場合には、再度専用工具を装着して補正を行う。

規定値以内になったら工具を外し、フロントカバーを新しいガスケットと共に取りつける。
ボルトの締め付けトルクは25Nm。

4.チューンドシリンダーヘッドブロックの装着

新しいガスケットを正しい向きで取りつける。左右があるので注意。
ガスケット上の中央上部に『THIS SIDE UP』と表記された側が上側となる。
新しいシリンダーヘッドを装着する。
シリンダーヘッドボルトの締め付けに際しては、以下の通り、取り決めがある。
1.M11ボルトの1〜10を均等に30Nmのトルクで締める
2.M11ボルトの1〜10を均等に90度分さらに締める。
3.M11ボルトの1〜8を均等に90度分さらに締める。
4.M11ボルトの9と10を均等に50度分さらに締める。
5.M8ボルトの11〜15を、まず11から始め、両側へ向かって順番に30Nmのトルクで均等に締める。

取り外した時の逆順にて、インテークマニフォールド、エギゾーストマニフォールド類を装着して完了。


大枚を投じた上、これほどまでに大変な作業を行って、425HPでは割が合わないと感じてしまうのは私だけでしょうか。
コスト面ではニトロ装着が圧倒的に有利で、作業も簡単です。またコスト面でやや不利ではあるものの、パワーアップ度を考えるとスーパーチャージャーを装着してしまったほうが早いような気がします。
しかし、メカニカルチューニングの良さは、レスポンスの良さと耐久性にあります。ニトロやスーパーチャージャーがエンジン本体に与えるダメージはそれなりに大きく、耐久性面において問題があることは確かだからです。
作業工程を見れば解る通り、カムシャフトの交換をせずにヘッドブロックだけを交換するならば、エンジンを降ろす必要も無ければ、専用工具も不要です。