<US仕様ヘッドライト&HID装着日誌> 
Installation of US Headlights with HID
 
RAYBRIGのHIDアシストライトに組み合わせて、レンズ面を使用するつもりで取寄せたUS仕様のヘッドライトですが、クリアーレンズでもなければマルチリフレクターでも無く、普通のレンズカットと反射鏡によるものでした。
しかし、照射テストの結果、配光基準の違いからか日本仕様の左肩上りに対して右肩上りにはなっておらず、さらにフォグライトのような広い範囲に均等なスポット性配光を行うものであったことから、HB4タイプのHIDバルブを装着して使用してみることにしました。
またUS仕様は4灯式なので、ハイビームはそのまま装着されていたHB3タイプハロゲンバルブを使用し、純正のハイビーム用配線に接続しました。

C5のヘッドライトは、左右が対称でそれぞれ専用の形となっているが故なのか、ロービームのレンズカットが左右それぞれ専用になっており、微妙に異なる配光制御が行われていました。
何よりも大きな違いは、本体が今流行りの一体成型樹脂製で非常に軽く、日本仕様のものと比べ重さは1/4程度しか無いことです。そのため、ヘッドライト開閉機構を支える部分の強度不足についても、本重量であれば全く問題は無く、走行中に揺れることも無くなりました。


<装着>

@ヘッドライトの取り外し  Remove head light

ヘッドライト取り外し方法については、HID装着日誌を参照。

Aインバーター・イグナイターの装着 Install Inverter and Igniter

本装着もHID装着日誌と同じです。
 

使用バルブは、H4からHB4になります。US仕様のHB4は日本仕様と規格が微妙に違いますが、C5の場合は装着可能でした。
HIDバルブの防水対策は別途行う必要があるので、写真のようにバルブ周辺にコルゲートチューブを被せ、周囲を熱収縮チューブで固定し、その背部にバルブ付属のゴムキャップを被せました。
また、ハイビームは、既存のヘッドライトコネクターからハイビーム用プラスを取り出して、HB3バルブに専用コネクター(これはヤナセに頼んで部品として取寄せる以外に入手方法は無いかもしれません)、又は、平型圧着を利用してアースと共に接続します。
圧着の場合にはショートと防水処理に十分注意すること。
尚、ハイビーム用HB3バルブは、装着時直後にヘッドライト開閉用支柱が在るため、US仕様のようにバルブの接続部分が90°曲がっているものでないと装着できません。

Bシェードの製作 Install shade on bulbs
 

これは、左から日本仕様、US仕様、US仕様シェード付きをノーマルのハロゲンバルブ(H4とHB4の55W)を装着して壁に向けて照射したものです。
日本仕様は左肩上りに奇麗に上部がレンズカットされていますが、中央に明るい部分がスポット状に集中しており、それ以外の部分への配光が極めて少ないことが判ります。
しかも、左通行にも拘わらず左下路肩部分への配光も不足しています。さらに、照射されている部分以外の周囲の明るさから見ると、カメラのアイリス(絞り)が中央と右の写真に比べて若干開いていることから、照射光そのものの明るさも低いようです。
一般的なレンズカットによるヘッドライトはこんなものなのかもしれませんが、BOSCH製としては少々ガッカリさせられてしまいました。
それに比べてUS仕様は、配光の境界線が甘く左肩上がりにもなっていないのですが、広い範囲に均等な配光がされており、日本での使用も十分可能であることが分かります。
さらに、シェードを装着することで、中央部のスポット状の明るい部分が消え、より均等な配光が実現されています。
写真を見れば分かるように、左右のレンズカットが異なっています。
右側通行用に運転席側が左方向への配光を制限し、右方向への配光を広くしており、逆に助手席側は路肩を照射するために左方向への配光を広くしていることが分かります。
中心部のスポット状に明るい部分は、レンズ効果が少ない反射鏡が透過して見える、左右の桝目が荒い部分により発生しています。
そこで、光源の正面からの直視防止を兼ね、図のような左右下と前面を遮光するシェードを製作して装着しました。
シェードの材質はRAYBRIG用に使用したものと同じミラーコーティングされたステンレス板です。
幸い同じHB4規格でも、US仕様のF型よりもBELLOFのHB4用バルブの方が若干直径が小さかった(と言っても僅か約0.3mm程)ために、ハウジングの装着スペースとバルブの間に僅かな隙間ができ、それを利用して取り付けられました。

シェードを付けずにHB4タイプのHIDを装着すると、斜め上方向に強烈なスポット状の照射が発生してしまい、ハイビームと同等の位置になるため、そのままでは対向車はおろか前方車に対しても幻惑になり、使用できません。

C光軸調整 
 

<光軸調整にはトルクスE型(メス・8mmヘッドが必要です>
1 = 1.52m(地上からの高さ)/Distance from Ground
2 = ヘッドライト光中心軸幅/Width of bulb center
3 = 車両幅の中心/center of the car
4 = 7.62m(投射先までの距離)/Distance from the car to screen
6 = 地上からヘッドライト光中心軸までの高さ/height from ground to bulb center
1⇔4
1⇔3 = 102mm
2⇔6 = 51mm、2⇔5 = 64mm
助手席側は、そのまま適切な位置(つまりかなり左向きになる)に合わせるとライト全体が奥に入りこむため、閉めたときに内側が開閉用支柱に干渉してしまうので、ヘッドライトの左側上部を支えている部分(写真丸印部分)の前側にトルクスT25を入れ、後部の10mmナットを緩めて外し、ワッシャーを入れて取付位置全体を1cm程度前方に出しました。
これにより、ヘッドライトが下向きになった分、上下方向光軸調整で上向きにすると、結果としてヘッドライト全体を左方向へと向けることができるので、左右光軸方向調整はほぼ中央部分でOKとなり、干渉もなくなりました。
運転席側は、ただ左向きにほぼ一杯まで調整しても干渉する部分はありませんが、ヘッドライト前面カバーからライト内側がやや飛出てしまい、場合によっては干渉してカバーが正しく取り付けられなくなってしまいます。
ヘッドライト前面カバーはヘッドライトカバーに取り付けられるので、ヘッドライトカバーの位置を変えて干渉を避けようとするとヘッドライトを閉じた時に、ボディ面と面一にならなくなってしまいます。
そこで、ヘッドライト全体の取付位置を上げる必要が出てきます。
その場合には、ヘッドライト取付ボルトを一旦緩め、ヘッドライト開閉機構の取付位置前側を上げて(結構上がる)から再度締めると、うまく行きます。
勿論、干渉が無ければ必要の無い作業になります。

<使用レポート>
 

壁面への照射では、上部をクッキリとカットされ左肩上がりに設定された配光を見慣れていると、少々頼り無い感じがしないでもありませんが、RAYBRIGの時と同様、見た目より遥かにしっかりと配光区分されており、少なくても日本仕様のハウジングにHIDを装着した場合よりは遥かに実用的に感じました。
的確な配光が適うのは、レンズカットと反射鏡との相対性が良い(つまり反射鏡の正面とレンズの正面が一致している)ため、広い範囲に均等な配光が実現され、さらに右側通行用が故の対向車への幻惑や上部への配光漏れはシェードの効果により発生しません。
絶対的な明るさが強烈なため、照射範囲上部のカットがあいまいな部分が、場合によっては対向車からクレームを受ける可能性が無いわけではなさそうですが、幻惑されるほどのものではないと思われます。
右の写真はハイビーム点灯時です。ロービームのHIDが方向的に配光エリアに入っていないにもかかわらず、HB3ハロゲンバルブのハイビームよりも明るいことが分かります。
やはり日本仕様で使用されるBosch製ハウジングは、反射鏡とレンズ面の相対性が崩れている(つまり左写真のように反射鏡の面積が小さく照射範囲がレンズ面に対して小さ過ぎる)ことにより、計算上の配光が的確に行われていないのでしょう。
それに比べ、右写真を見れば分かるように、USヘッドライトは、レンズ面の直後に反射鏡が近接して配置されているため、反射鏡の集光がそのままレンズを直線で通過して行くので、レンズの効果がはっきりと現れるようです。
また、マルチリフレクターではないですが、ロービーム用反射鏡は、上方向への反射を防止するための加工が施してありました。
装着は日本仕様と全く同じ形状なので、そのまま何の加工もなくボルトオンできるため、結論から言えば、シェードさえ装着すれば何も規格違いのHB4バルブ付きHIDキットを買ってわざわざ装着しなくても、HID付きのUSヘッドライトをそのまま装着すれば、全てが完了してしまうことになります。
そして、なによりも軽量であることで揺れが全く無いことが喜ばしいですね。
USヘッドライト+HIDが、日本仕様ヘッドライト+HIDよりも優れていることは明らかになりましたが、RAYBRIG製角型2灯式マルチリフレクターヘッドライトを、日本仕様ヘッドライトハウジングに移植する方法との差異がどれほどあるかの比較実験が実施された段階で、最終評価を出したいと思います。

純正品の登場が最も簡単で確実な方法ですが、絶対生産量もさる事ながら、左側通行用のヘッドライトの装着量ともなれば、年間を通してもせいぜい1000台にも満たない程度であることを考えれば、C5日本仕様のHID化や、最先端のマルチリフレクタータイプの装着は、遠い未来になってしまうでしょう。
唯一、左通行と右通行への対応が簡単にできるものとしては、プロジェクタータイプが考えれます(内部のスリットスクリーンを表裏反対に装着するだけ)が、今のところキャデラックが対応しているのみです。
C5の純正装着フォグライトがプロジェクタータイプですが、あれと同じ大きさでヘッドライト用がつくれれば、問題は一挙に解決してしまうのですが、焦点距離の問題で、あの長さでは無理でしょう。
RAYBRIGマルチリフレクターヘッドライト装着日誌