コイルオーバーショックピロアッパーマウント装着日誌
Installation of TEIN's Pillow Ball Upper Mount on Coil Over Shocks

装着してわずか一ヶ月も経過しない内につぶれて亀裂が入り始めてしまったゴムサポート部分。このまま放置すれば割れて壊れてしまうことだけは確実でしょう。
そこでピロアッパーマウントに交換することにしました。

Rubber bush for supporting top of Coil over shock was broken in a month.
Therefore install pillow upper mount.

ピロはTEIN社製のものを採用しました。
アッパーマウントのサポート強度問題解決を図ると同時に、走行性能においても大きな効果が得られます。
使用したTEIN社の製品番号はPAS38-31PFROですが、この製品の構成部品の内、実際に使用するのはピロをマウントした部分とショックをサポートするワッシャ(カラー)がそれぞれ4個。
ピロ部分だけとカラーは部品供給されているが、マウントフランジについては不明です。
装着に際しては、フロント側は6.5mm径の穴をシャーシに4つ空ける必要があります。またリア側は装着用固定ハットを新規製作します。
作業前に必要な部材を製作しておけば、装着作業時間そのものはフロント側のドリルによるシャーシへの穴空けを含め3〜4時間程度で終わります。

Use TEIN's pillow this time.

<警告>

本品装着にあたっては、車両稼動の根幹に関わる部分であり、安全基準に適合する必要性があるので、必要な知識、技術、工具類が揃っていない場合には行わないこと。
本品装着と装着作業により発生するいかなる障害についても当方は一切責任を負いません。
本品の装着は99年モデルに行ったもので、他年式モデルへ装着する場合には異なる部分があります。

<Warning>
Do not install without skill and tool.
I'm never responsible any trouble by installation and work.
The goods installed to Model '99 only.


【必要部材及び工具類(コイルオーバーサスペンション装着時に使用した工具類はここでは記載していません)】
@M6/30mmボルト:8本(フロント用)、M6/25mmHEXボルト:8本、M8ボルト用ナット:16個
B直径21mm、長さ20mmのアルミシャフト(内径18mm、肉厚1.5mmのアルミパイプと直径18mmのアルミシャフトを組み合わせる):4本(フロント・リア用)
Cウレタンゴムシート(3mm厚程度):100mm×100mm程度4枚(フロント・リア用)
Dアルミ板:10mm厚4枚、1mm厚2枚(それぞれ100mm×100mm程度)
E電動ドリル、アルミ用電動カッターとサンダー、3mm、6.5mm、10mm刃(全てスチール用)、40mmホールソー刃、M6用6角ヘッド(HEX)レンチ


1.ピロ装着の準備  Work before installation

製品は某国産車用のもので、ピロ部分だけがマウントから取り外せるため、装着にあたっての改造も簡単なものになりました。また本品のコーナー耐荷重は1個当り875kgfあるので耐久性面でも問題は無いでしょう。
今回は製品の概要が判らなかったため、ストラットマウント部分を含んだ完成品を購入しましたが、実際にはピロが装着された部分とサポートワッシャ(カラー)しか使いません。従って、補修部品として取り寄せることが可能なら、不必要なマウントを含んだ製品を購入する必要はありません。

This is TEIN's Pillow Upper Mount.
作業前に本品のボルト穴とピロセンター部分の位置関係を正確に示す型紙を取っておきます。
この型紙は車両シャーシにピロを取り付ける際のガイドにもなるので、丈夫なもの(厚紙等)にしておいたほうが良いでしょう。

Before start, make chart marked the point of screws and center of the pillow.

<インナーシャフト製作 (Inner shaft)>

ショックのシャフトが通るピロセンターの穴が大き過ぎるのでインナーシャフトを製作します。
ピロセンター穴の内径は18mmですが、そのサイズのアルミシャフトが市販品に無かったため、内径15mm、肉厚1.5mmのアルミパイプに、直径15mmのアルミシャフトを入れて18mm径のシャフトをつくりました。これを長さ20mmに裁断したものを4個用意します。

Make 21mm shaft using 18mm shaft inserted to  21mm pipe 1.5mm thickness.
Cut it 20mm length and make 4pcs.


製作したシャフトの中央にショックシャフトが通過できる穴(10mm)をドリルで空け、ピロセンターに挿入します。
穴空け位置は正確にセンターを出します。また一度に10mm大の穴を空けずに3mm程度から序々に大きくして行くと良いでしょう。
ウレタンゴムシートは装着時にサイズに合わせてカットします。

Insert 21mm shaft inside of the pillow center.
Polyurethane rubber sheet will be cut when install later.

また、ショックサポート用リングワッシャ(カラー)も内径が大きいので、装着時にセンターを出すためウレタンゴムでワッシャを製作します。
これは同一の機能があれば素材は何で製作しても良いでしょう。

To install pillow under support ring at the center, insert inner ring.

<フロント用サポート製作 (Support for Front)>

フロント側は、シャーシに空いている穴の大きさが小さいため、ピロ部分を直接装着することができません。
さすがにシャーシに40mmもの大穴を空ける元気は無いので、スペーサーをアルミ板で製作し、全体を浮かせることにしました。

For Front, make 11mm thickness plate by aluminum.
こちらは、今回行った作業とは違う別の方法です。ピロ固定用ボルトをスペーサー固定用と兼用せずにそれぞれ専用のボルト・ナットを使用します。
この方式だと、車両シャーシに空ける固定用の穴の位置出し精度が容易になる上、固定ボルトも2ヶ所で済みます。
スペーサーにピロ固定用として空ける穴は、固定用HEXボルトのヘッドを埋め込むため、リア用で製作したハットと同様に貫通した6.5mm穴に5mm程度の深さまで10mmの穴を空け、断面をミルで平らにします。⇒リア用ハット製作を参照

This is another way to install Pillow.
Pillow installs on Aluminum Plate and Plate installs to the car by 2 bolts and nuts.

スペーサーの形状は、一辺が65mm、中穴径が40mm。必要な厚みは11mm以上なので、10mm厚と1mm厚を組み合わせましたが、5mm2枚と1mmでも、3mm4枚でも良いでしょう。
製作手順は、まずアルミ板を周囲を一辺65mmの正方形に裁断したものの中心に40mm径の穴を空けます。出来上がったもの全てにピロ固定用のボルト穴(6.5mm)を空けます。穴は少々大きめでもかまいません。
この段階でピロを装着してM6ボルトがスムースに締められる状態になっていることを確認します。
装着位置によっては奥側となる辺がシャーシのスペースに入りきらずに干渉する場合もあるので、奥側になる角は斜めになるように削り落しておくほうが安全でしょう。

Cut 65mm by 65mm and make 40mm hole. I use 10mm and 1mm thickness.
Also make 4 6.5mm holes for Pillow.
Check holes are correct position.


スペーサーを使わずに直接シャーシフレームにマウントする場合には、既存の穴を40mmに広げます。
こちらの方法だとショックのストロークが増すので車高をかなり下げても対応可能となります。
尚、アルミ製トップハットは製品のものは壊れてしまったので製作品に換えてあります
既に空いている穴を40mmに広げる作業はセンターを正確に出すことが難しいため、製作したアルミマウントプレートの穴をガイドにしてホールソーにより空けました。
さすがにシャーシフレームは頑強で、かなりの時間と根気が必要です。
勿論、こうなるともはや純正ショックの装着は不可能となります。

<リア用ハット製作  (Support for Rear)>

リア側用は、新しいサポートハットを製作します。
当初、5mm厚アルミ板で製作したが、強度面で不足を感じたため、10mm厚にしました。

For Rear, make new support hat by aluminum.
試しに純正のハットに40mmの穴を空けてみたのですが、ピロを固定するボルトが斜めに入って補正でききれない状態になってしまったため断念しました。

I once have tried to make 40mm hole on Factory's but could not tight bolts.
製作するハットの形状はこのようになりました。

This is shape of New support for rear.

純正のハットと同じ大きさに裁断した10mm厚アルミ板の中央に40mmの穴を空けます。10mmの固定用ボルト穴を純正ハットと同じ位置に空けます。
ピロ固定用ボルト穴位置に、まず6.5mmの穴を空けます。次に表面から約5mm程度の深さまで10mmの穴を空け、断面を平らに仕上げます。

Cut 10mm thickness Aluminum Plate the same as Stock's and make 40mm hole at the center.
Make 4 of 6.5mm holes for pillow installation and drill 10mm hole about 5mm depths from surface.

10mmのドリル刃で途中まで空けた穴は、刃の先端が斜めになっているので、断面を平らにするためにはこのような先端が平らになっている特殊な刃(ミル)が必要です。
実はこの刃、M10用で1本2600円もします!!

It is necessary to use this type drill to make 10mm hole having flat surface.

ピロを装着し、10mm穴側からM6/25mmのHEXボルトを入れて固定します。この時にHEXボルトの頭が表面より上に出てはいけません。出た場合には穴の深さが足りないので、出なくなるまで穴を深くします。
裏側は緩み防止のためにM6のナットをスプリングワッシャを入れて締めます。

Install Pillow from 10mm hole side by M6/25mm HEX bolts and screw nuts.
Top of HEX bolt head must be located under surface of the plate.

100mm×100mm、厚さ3mmのウレタンゴムシートの中央に28mm径程度の穴を空けます。また、ピロ固定用ボルト穴(6.5mm)も空けます。穴は少々大きめでもかまいません。
フロント用は取付板の外径(65mm×65mm)に合わせて周囲をカットします。リアは製作するハットの大きさに合わせて周囲をカットします。
このウレタンゴムシートはC4時代にコイルオーバーサポート用に使用していましたが、熱、荷重を含めた耐久性に問題は出ませんでした。東急ハンズでも入手できる既製品で、鋏で裁断が可能です。→ウレタンゴム追加

Between the pillow and car base, insert polyurethane rubber sheet.
Make holes for bolts and shaft according to the chart.

2.装着 Installation

<フロント編 (Front)>

型紙のセンターをシャーシ穴のセンター位置に固定し、ピロ取付ボルト穴位置に合わせて、車両側シャーシにドリルで穴を空けます。ピロのセンターはシャーシ穴のセンターと同一でなければなりません。
空ける位置にポンチを打ち、まず3mm刃でガイド穴を開け、次に6.5mm刃で穴を広げます。穴が空いたら、ピロとスペーサーを試しに装着して穴の位置が正確であることを確認します。位置がずれてボルトがスムースに入って行かない場合には穴の大きさを広げる等して位置の補正を行います。またスペーサーの奥側の角がシャーシ上部のフラットな部分に納まる大きさであることを確認します。干渉している部分があれば削って補正します。
穴の内部はシャーシブラック等で錆防止用の塗装をした方が良いでしょう。

Make  4 of 6.5mm holes at support frame according to Pillow screw position.
ショックのゴムサポート用ワッシャを外し、ピロ用のリングワッシャを入れ、ピロをショックに取り付けます。

Install Pillow with support ring on shock.
上部にM10用のワッシャとスプリングワッシャを入れ、ショックのナット(14mm)を締めます。ナットの締め付けトルクについてデータはありませんが、50Nm程度で良いでしょう。
同じピッチのナットが手に入るならば、2重ナットにしたほうが安心できます。

Install  shock nut tighten 50Nm.
シャーシに空いた穴にM6/30mmボルトを入れます。ボルトにはスプリングワッシャとワッシャを入れました。
ウレタンゴムシートをボルトに入れ、スペーサーとピロのついたショックを装着します。
ボルトのねじ込み最初は手で行い、ピロのネジ穴にボルトが正しく入って行っていることを確認してから、レンチを使います。またボルトは4本均等に少しずつ締めて行きます。ボルトの締め付けトルクは10Nmにしました。
ボルトが締まったら、緩み防止を兼ねて、下側からもスプリングワッシャとM6ナットを締めておきました。

Install shock with Pillow. Screw M6 bolts by hand at first and screw sequence.
Screw M6 nuts for safety.
ショック下側固定用ボルトのナットを締めます。締め付けトルクは28Nm。スプリングを締めて完了です。
ショック下側を所定位置に固定した段階ですでにピロが少し動いていたところをみると、ロワAアームの位置によってサポートセンターがかなり動いていることをうかがわせます。
車高調整は、計算上でそれまでの設定より20mmダウンすれば同じになります。

Install under support of shock. nuts tighten 28Nm.

<ウレタンゴム追加作業>

厚さが5mm、硬度90のウレタンゴムシートが売られているのを見つけました。
硬度90はチューニング用ウレタンブッシュとして使用されているものと同じです。それまで使っていたもの(左)に比べ、厚い分だけ柔軟性が高く感じるものです。少しでも乗り心地を改善するために役に立つのであればと思い、耐久性をチェックするために装着をしてみました。今回は円状のものを購入しましたが、50mm角のブロック状のものも売られています。
これまでのウレタンシートはそのままに、新たにピロとスペーサーの間に入れました。
全体の厚さが増えたため、ボルトをM6/40mmに変更し、1mm厚のアルミ板の使用は止めました。
ウレタンゴムシートの伸縮によってボルトに緩みが生じることを防ぐため、ボルトとナット両方共にスプリングワッシャーとリングワッシャーをつけました。ボルトとナットの締め付けトルクは10Nmにしました。→リア側

<リア編 (Rear)>

ショックのゴムサポート用ワッシャを外し、ピロ用のリングワッシャを入れ、固定用ハットが着いたピロをショックに取り付けます。

Install top hat with pillow on shock.
上部にM10用のワッシャとスプリングワッシャを入れ、ショックのナット(14mm)を締めます。ナットの締め付けトルクについてデータはありませんが、50Nm程度で良いでしょう。
同じピッチのナットが手に入るならば、2重ナットにしたほうが安心できます。

Install shock nut tighten 50Nm.
装着前にハットがシャーシ上部のフラットな部分に納まっていることを確認します。納まりきっていない場合には、干渉している部分を削って補正します。
ウレタンゴムシートを挟んでから純正のボルト(13mm)でシャーシ側に固定します。締め付けトルクは29.5Nm

Install shock with hat and pillow. Bolts tighten 29.5Nm.
ショックの下側のボルトナットを固定(ナット締め付けトルク220Nm)して、スプリングを締めたら完了です。
車高調整は、計算上でそれまでの設定より13mmダウンすれば同じになります。

Install bolts and nut under shock tighten 220Nm.

<ウレタンゴム追加作業>

リアもフロント同様、新しいウレタンゴムをピロとハットの間に装着しました。こちらのボルトは以前のままHEXのM6/35mmを使用し、ナットにはスプリングワッシャとリングワッシャを入れます。ナットの締め付けトルクは10Nmにしました。→フロント側

<フロントロワーブッシュ>

アッパー側ブッシュに耐久性が無かったことから心配していたのですが、案の定、半年経過した段階でフロントのロワー側ブッシュも割れてしまいました。
従って、こちらも強化ブッシュへ交換するか、ピロマウントに変更する必要があります。
コイルオーバーショックフロントロワーピロマウント装着

Lower bush is also broken so that I install Pillow.

3.装着レポート

本当に驚きました。ピロによるサポートがこれほどまでに効果があるものかと。コイルオーバーで既に十分な走りが適っていると感じていたのですが、さらに路面への応答性が鋭くなりました。また路面状況と共にサスペンションの挙動までもが体にダイレクトに伝わることが素晴らしいですね。ハンドルの切れも良くなりました。ブッシュサポートによる支点の揺れと伸縮が無くなったことが要因でしょう。
所詮ゴムである以上、振動吸収能力は優れていても、その反面伸縮することで応答については時間差が生じてしまうことは避けらませんが、ピロであればそれが全くありません。
但しこれはコイルオーバー方式で得られた結果であって、スプリングサポートとショックサポートが異なったポイントになる場合のピロ装着効果のほどは定かではありません。
加えて懸念されていたブッシュサポートの強度問題も解消されたので、一挙両得と言ったところです。
ピロが壊れてしまう可能性が全く無いというわけではありませんが、一流メーカーが車重でもコーナー耐荷重でもC5と同等の車両へ装着することを前提に製造しているものである以上、少なくてもゴムサポートより遥かに安心できると言えるでしょう。
乗り心地と言う面においては最悪と言っても過言ではありませんが、大きな段差を通過する状況以外は想像していたよりも過激度は少ないです。また高速道路走行においては、疲労感を与えてしまうような硬さは全く感じられませんでした。


新しいウレタンゴムの耐久性については今後の検証となりますが、コイルオーバーショックに付属していたものに比べれば遥かに頑丈な上、荷重面積も広いので大丈夫でしょう。依然硬いのは間違いありませんが、ともかくより一層振動が減り、突き上げるような衝突音も大幅に軽減することができています。
装着直後のテスト走行段階で既に半分程度の厚さまでつぶれてしまった製品付属のブッシュに比べると、フロント、リア共にウレタンゴム部のつぶれは全く無く、ボルトナット類の緩みも起っていません。